株式会社そらは、十勝で起業をしようとする起業家や十勝のベンチャー企業に対して、株式会社山忠HD(本社:北海道河東郡音更町)と共同して支援を行っていくことを発表しました。具体的には、出資等のファイナンス支援、事業支援、ビジネス講習、人材支援等を行っていきます。
今回は、起業して間もない私たちが、このタイミングで何故十勝で起業家の支援を行うことを決定したのかについて、書きたいと思います。
開拓者精神旺盛な十勝
十勝は、昔から開拓者精神の旺盛な街です。そもそも十勝の開拓は、北海道に多く見られる官主導の屯田兵によるものではなく、依田勉三氏の率いる晩成社という会社をはじめ、本州からの民間の開拓移民を中心に進められました。
そのようにして長年十勝の大地に脈々と受け継がれてきた“開拓者精神”は現在でもしっかりと根付いており、5年ほど前からは「とかち・イノベーション・プログラム」という新事業創造プロジェクト(主催:帯広信用金庫、共催:北洋銀行、北海道銀行、北海道21世紀研究所、道銀地域総合研究所、十勝19市町村、協力:野村総合研究所、とかち財団)が活発に展開され、多くの起業家が誕生してきました。
何故、起業家を支援?
人口減少→人手不足→企業の衰退→地域の衰退という悪循環は、地方の共通の課題です。帯広市の人口は、釧路市を先日(2020年12月末データ)抜き北海道第5位になりましたが、それでも人口は緩やかな減少傾向です。
このような状況を打破して地域を活性化させていくためには、やはり「人」が必要であるため、各地域様々な移住支援策を打ち出していますが、移住者を増やすのに必要なのは間違いなく「雇用」です。
例えば株式会社そらは設立して9ヵ月で経営陣含め26人体制になりましたが、10人のメンバーは他の地域から移住してきています。社員の家族まで含めると更に多くの人が、株式会社そらへの転職に伴いこの9ヵ月で十勝に移住してきたことになります。
このように、雇用を生み出すのに必要なものは「事業」です。十勝に根付いて事業を行う企業が次々と立ち上がれば、雇用が創出され移住者が生まれ、地域創生の実現へと繋がっていきます。
何故私たちがこれをやる?
私たちが株式会社そらを設立したのは昨年(2020年)4月15日。まだ設立して1年も経たない会社なので、普通であればこのようなプロジェクトの応募者側の立場になります。
また、私たちも、昨年9月にM&Aにより新規参入したグランピング施設=「中札内農村休暇村フェーリエンドルフ」の大規模リニューアルを実施するタイミングでもあり、自分たちの事業を軌道に乗せることに精一杯な時期であります。
それでも敢えて私たちが起業家支援を行うのは、今の私たちの立場でしかできないことが数多くあると考えるからです。
まず、起業した直後は一日一日のことで精一杯になりがちですが、そのタイミングでしか出来ないことも多々あります。特に「仲間」、「資金」、「顧客」をどうやって、どのような順番で確保していくのかはその後の会社の成長を考える上で極めて大事なことでありますが、この辺りは、ほぼ同時期に起業した私たちだからこそ、より鮮度の高いアドバイスができると考えています。
また私の場合は東京都出身で、自分自身が一番好きな場所である十勝を選び仲間と共に起業したわけですが、十勝の人々から見たら私たちが何者か分かりません。私たちがいくら「十勝のために!」と声を大にして唱えても、その言葉に説得力を持たせるには信頼の積み重ねが必要となります。初期段階に築き上げる土台が脆いと、その後いくら頑張って行動しても信頼を積み重ねていくことは難しいと思います。
よく、地域創生には、「よそ者・若者・ばか者」が必要だと言われます。その地域の常識にとらわれず外部の視点から俯瞰して見ることのできる“よそ者”、若い発想力と思い切りの良さを持つ“若者”、リスクを恐れず常識の枠を超えてチャレンジする“ばか者”。
今年度で35歳になる私たち経営陣をギリギリ“若者”枠に入れていただければ、私たちはまさに「よそ者、若者、ばか者」です。
今回のプロジェクトも、そんな「よそ者・若者・ばか者」からの応募は大歓迎です。私たちも同じ「よそもの・若者・ばか者」だからこそ共感できる点やアドバイスできることがあると思っています。このプロジェクトを通じて良い出会いが生まれることを願っています。
支援の判断軸は、「共に十勝を盛り上げられるか」
今回私たちが行うような「ベンチャー企業支援」をする代表的な存在としては、ベンチャーキャピタル(VC)が挙げられます。VCは、高い成長が予想されるスタートアップ企業に対して出資を行い、投資先の企業が上場した際などに株式を売却して、キャピタルゲイン(当初の投資額と株式公開後の売却額との差額)を得ます。また、資金面の支援だけでなく経営コンサルティング等のハンズオン支援を行い、企業価値を高める手助けをすることもあります。将来性のある企業に積極的に投資をして高いリターンを上げるため、資金回収にかける期間も短く、基本的には回収して増やした資金で新たな投資を行っていくのがVCの特徴であると言えます。
私たちはこのようなVCとは少し異なる立場です。勿論私たちも資金を出すわけですから、リターンを無視することは出来ません。しかし、リターン(特に短期的な)のみを追求するのであれば、私たちの出番はありません。
私たちは、VCの目線からでは資金調達が難しいスタートアップでも、十勝の発展に大きく資する事業であれば積極的な支援を考えます。そもそも私たちの本業は別にあり、プロの投資家ではありません。やや語弊のある言い方かもしれませんが、スタートアップへの投資事業を通じて直接的な利益を上げなくても良いのです。
それよりも、投資・支援を通じて繋がることが出来た起業家と「共に十勝を盛り上げられるか」を大切にしたいと考えています。必然的に、時間軸も短期ではなく中長期で考えることになります。
十勝を起業家で溢れる街に!
今回、パートナーとして私たちと組む決断をしてくださった山本忠信商店(本社:北海道河東郡音更町、代表取締役:山本英明様)を中核企業とする山忠HDは、創業昭和28年の歴史ある企業です。地域の生産者が育てた良質な農産物を全国の消費者に届ける役割を担い続け、十勝と共に発展を遂げてきた企業です。
一方で私たちは、金融機関出身の3名のメンバーで昨年4月に創業し、グランピング等の観光・宿泊業を中心に事業をスタートし、これから十勝と共に発展していくことを目指す企業です。
70年近い歴史ある企業と創業1年にも満たないベンチャー企業という対照的な企業同士がタッグを組むことになりますが、だからこそ生まれるイノベーションは必ずあると思っています。
「十勝と共に栄える」という共通の目標を持つ者同士、未来の十勝を創る開拓者と“ワクワクを次々と生み出していく十勝”を共に目指します。
3月には起業家支援のための新会社を設立し、4月から応募者を募ってまいりますので、今後の進展はブログ等を通じてご報告してまいりたいと思います。
「我こそは!」という起業家の方、お待ちしています!
・1986年3月5日生
・北海道大学法学部卒
・2009年4月 野村證券株式会社入社
・入社後、錦糸町支店に配属。2年半の勤務を経て人事部付で新卒採用業務に携わる。2012年より横浜支店で2年間勤務し、2014年より4年間組合専従。2016年の夏からの2年間は執行委員長を務める。執行委員長の任期満了に伴い、「自身が最も好きなとかち帯広で、地域に貢献できる仕事がしたい」と会社に希望を伝える。
・2018年9月 とかち帯広営業所に配属
・2020年3月 野村證券株式会社を退社
・2020年4月 株式会社そらを設立